14.パート・アルバイト雇用時の注意点
年々、最低賃金が上昇している昨今ですが、年収を抑えた働き方をされているパート・アルバイト社員が多い事業主様は、人件費の上昇のみならず、労働時間の調整も必要となり、悩みの種がつきないところです。
雇用の際にどのようなことに気を付ければ良いか見ていきます。
毎月の給与計算は? |
パート・アルバイトに対する給与や賞与についても源泉徴収の対象となります。雇用保険料及び社会保険料の控除後の金額(それぞれ被保険者に該当の場合控除)に「給与所得の源泉徴収税額表」より下記の適用区分を基に算出していきます。
※賞与について「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使用します。
支払形態 |
扶養控除等申告書の 提出の有無 |
適用する欄 |
・月毎に支払うもの ・月の整数倍の期間毎に支払うもの ・半月毎、10日毎に支払うもの |
有り | 月額表 甲欄 |
無し | 月額表 乙欄 | |
・毎日支払うもの ・週毎に支払うもの |
有り | 日額表 甲欄 |
無し | 日額表 乙欄 | |
・日雇賃金 | - | 日額表 丙欄 |
※注意点
・雇用期間の定めのないパート・アルバイトの場合は、日額表の丙欄を使用できません。
・雇用期間の定めのある場合(2ヶ月以内)は、日額表の丙欄を使用できますが、雇用期間の延長があった場合は、2ヶ月を超えた部分については、支払形態に応じて月額表又は日額表の甲欄又は乙欄を使用することとなります。
最低賃金は? |
パート・アルバイトに対しても最低賃金は適用されるため、最低賃金が毎年10月頃改正されるので、現在、雇用されている社員が最低賃金を下回っていないかのチェックも必要です。
但し、都道府県労働局長の許可を受けることを条件として、試用期間中の場合等、一定の条件に該当する場合は、最低賃金より減額した額により適用を受けることも可能です。
※最低賃金制度は最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度です。
最低賃金には、地域別最低賃金及び特定最低賃金の2種類があり、両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。
配偶者控除や配偶者特別控除の適用は? |
主婦(夫)をパート・アルバイトとして採用する場合には「扶養の範囲内で」という志望者も多いのではないのでしょうか?
夫(又は妻)の配偶者控除や配偶者特別控除が受けられるかにも、注意を払っておく必要があります。
種類 | 要件 | 適用の有無 |
配偶者控除 |
所得者本人の合計所得金額が 1,000万円以下であること |
年間の給与総額が103万円 以下なら適用がある。 |
配偶者特別 控除 |
所得者本人の合計所得金額が1,000万円以下であること |
年間の給与総額が103万円超2,015,999円以下なら適用がある。 |
※社会保険法上の扶養の要件は年収の要件が130万円未満となっているため、130万円の壁を超えないように、又、配偶者の会社から支給される配偶者手当が失効しないよう苦慮されている事業主様が多いのが実情です。
労災保険は? |
労災保険は、常勤やパート・アルバイト等の雇用形態は問わず、また国籍も問わず、対象となります。
雇用保険や社会保険は、個人別の加入手続きが必要ですが、労災保険は不要です。毎年の年度更新(6月1日~7月10日)の際に、パート・アルバイト含め保険料を計算し納付していくこととなります。
雇用保険は? |
31日以上継続して雇用されることが見込まれ、所定労働時間が20時間以上の場合には、パート・アルバイトであっても雇用保険の加入対象となる。
当初31日未満であっても、31日以上の雇用の見込みがある場合は、その時点で加入となります。
社会保険料は? |
「1日又は1週間の所定労働時間」と「1カ月の所定労働日数」の両方が正社員の概ね4分の3以上であれば、パート・アルバイトも強制加入となります。
社会保険(健康保険・厚生年金)は、事業主や従業員の要望も応じて加入を選べる制度では無い為、要件に該当すると全て適用となるので注意が必要です。
⇒平成28年10月より加入要件が以下のように改正されました!
1週間の所定労働時間及び1カ月間の所定労働日数が、同一の事業所に使用される通常の労働者の1週間の所定労働時間及び1カ月間の所定労働日数の4分の3以上(以下「4分の3基準」という。)である者を、健康保険・厚生年金保険の被保険者として取り扱う。
↓
4分の3基準を満たさないケースについても以下の要件が加えられました。
①1週間の所定労働時間が20時間以上
②1年以上継続して使用される見込み
③報酬の月額が8万8千円以上
④学生でない
⑤500人を超える事業所に使用されていること
※令和4年10月より上記⑤の人数要件は100人超、そして令和6年10月より50人超と年金制度改正法の施行により変わりますので、103万円、130万円の壁の他に106万円の壁にも考慮する必要があります。
有給休暇は? |
正社員とは違い所定労働日数は少ないのですが、パート・アルバイトも有給休暇の付与対象となります。所定労働日数に比例した日数の有給休暇を与えることとなります。
以下の有給休暇日数をご参考下さい。
週の所定 労働日数 |
年間の所定 労働日数 |
継続勤務期間 | ||||||
6カ月 |
1年 6カ月 |
2年 6カ月 |
3年 6カ月 |
4年 6カ月 |
5年 6カ月 |
6年 6カ月 |
||
4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 |
6日 |
8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
※有給休暇の権利発生要件は、通常通りです。(雇入れ時より6カ月間の継続勤務と全労働日の80%以上の出勤です)
週の所定労働時間が①30時間未満 かつ ②(イ)週の所定労働日数が4日以下又は(ロ)年間の所定労働日数が216日以下の場合は上記の表のような比例付与となり、該当しない場合は通常通りの付与となります。