16.2018年度改正所得拡大促進税制
「所得拡大促進税制の要件及び計算が一新しております!」
平成25年度の税制改正により創設された所得拡大促進税制が昨年29年度の税制改正で税額控除の上乗せとして改正が行われてきましたが、30年度の税制改正では要件の緩和(中小企業のみ)や計算方法の簡素化が図られ改組されております。賃上げ要件の他に教育訓練費の増加要件等を伴うと税額控除の上乗せ措置が講じられています。
それでは、シンプルに変わった制度について順を追って見ていきましょう!
対象者は? |
青色申告の法人・個人事業主です。
適用対象年度は? |
法人・・・平成30年4月1日~令和3年3月31日までの間に開始する
各事業年度
個人事業主・・・平成31年~令和3年までの各暦年
※設立事業年度、解散(合併によるもの除く)・清算事業年度は不可
適用要件は? |
次の要件を満たすこと
①雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額を超えること
②継続雇用者(※1)の給与等支給額(※2)が前事業年度比1.5%以上
(大企業は3%)増加していること
③国内設備投資額(※3)が当期の減価償却費総額の90%以上
(大企業のみの要件、令和2年度の税制改正に伴い『90%以上
⇒95%以上』へ見直しが行われております)
※1 継続雇用者は以下の通り改正前と異なっていますので、対象者の集計には要注意です!
・前事業年度及び適用事業年度の全ての月において給与等の支給をうけた
国内雇用者
・前事業年度及び適用事業年度の全ての期間において雇用保険の一般被保
険者であること
・前事業年度及び適用事業年度の全て又は一部の期間において高年齢者雇
用安定法に定める継続雇用制度の対象となっていないこと
※2 給与等支給額・・・給与所得(所得税法28条1項)の対象となる給与や賞与などが主な対象となり、非課税通勤手当は、原則として除かれますが、賃金台帳を基に継続的に非課税となる通勤手当を含めて集計することも認められます。(措通42の12の5-1の3)
尚、国内に事業所において就労する従業員が対象となり、役員や役員の親族等は含まれません。
※3 国内設備投資・・・購入による取得の他、自社制作に係る費用、売買取引とされるリース取引も対象となっています。また、海外からの購入、貸付目的資産、中古資産も対象となります。
税額控除額は? |
(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×15%(法人税額・所得税額の20%が上限)
全ての国内従業員へ支払った給与等支給額での計算となります!(役員等への給与は除外)
また損金算入ベースでの計算となるため、未払計上額も対象となります。
上乗せ控除の条件は? |
①中小企業の場合(いずれの要件も満たすことが必要)
(イ)継続雇用者の給与等支給額が前事業年度比2.5%以上増加している
こと
(ロ)以下のいずれかの要件をみたすこと
・当期の教育訓練費(※1)が前期の教育訓練費に対し10%以上
増加させていること
・中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画(※2)の認定を
受け、同計画に記載された経営力向上が確実に行われていること
につき証明がされていること(経済産業省へ経営力向上報告書の
提出が必要となります)
⇒税額控除は25%
②大企業の場合(通常の要件の他、以下の要件を満たすことが必要)
(イ)当期の教育訓練費が前期及び前々期の平均の20%以上増加して
いること
⇒税額控除は20%
★但し税額控除のため、法人税・所得税共に税額自体が発生して
いない⇒利益が出ていない場合は、控除することはできません。
※1 教育訓練の対象者は法人の役員や個人事業主、使用人兼務役員、役員や個人事業主と特殊関係のある人(親族等)、内定者等の入社予定者を含みません。
※2 経営力向上計画の認定は適用年度終了の日までに間に合わないと上乗せ措置は受けられません。申請から認定迄、約30日程度(書類の追加、修正等で+2週間程度)かかるため、余裕を持って認定を受けた方が良いでしょう。
他の税制(中小企業経営強化税制や固定資産税の特例措置)との併用は可能です。