8.青色事業専従者にも加入が認められる退職金制度を活用しましょう!

 

青色事業専従者に対する退職金

  

 個人事業者の所得の金額の計算上、事業主様の退職金はおろか青色事業専従者に対する退職金の必要経費算入は認められておりません。

 所得税法では、専従者が受ける給与・賞与は給与所得の(※)収入金額とするものとされています。したがって退職所得の収入金額とされるものは、専従者給与とすることを予定されていないと解されています。

 

※所得税は収入の種類に応じ10種類の所得区分に分けられています。同じ勤労に基づくものでも退職所得については、老後の生活保障的な性格を有しているため、税負担が緩和されています。

 

専従者が利用できる共済制度

  

 ただし、直接退職金を支払うことができなくとも、小規模企業共済や中小企業退職金共済(中退共)を利用することが考えられます。

 実はどちらの共済制度も、従来は個人事業者の専従者の加入が認められていなかったものですが、平成23年より加入ができることとなりました。

 この場合、小規模企業共済では専従者を「共同経営者」として、中小企業退職金共済では、専従者を「従業員」として加入することになります。

 そのため青色専従者の場合は、「共同経営者」か「従業員」かのステイタスを選択せざるを得ないため、重複して加入することはできないこととなります。

 

小規模企業共済制度を利用する場合

  

 小規模企業共済に加入する場合、青色事業専従者は「共同経営者」として自己が契約する形になります。

 したがって、その掛金は青色事業専従者の所得控除(小規模企業共済等掛金控除)を適用して、専従者本人の所得税・住民税額を減らす形となります。

 

中小企業退職金共済制度を利用する場合 

 

 一方、「従業員」の立場で加入する中小企業退職金共済の掛金は、専従者給与を支払う個人事業者の事業所得などの所得の金額の計算上、必要経費に算入することになります。

 退職金を直接支払う場合には、必要経費算入が認められていないのに、中退共の掛金が必要経費となることに疑問がないわけではないですが、他の従業員がいる場合に、すべての「従業員」が加入(普遍加入)して平等に取り扱われ、「従業員」性が担保されていることが前提となります。

 どちらの制度も受取時には、一時金の場合は、退職所得(任意解約の場合は一時所得)、年金の場合は雑所得とされます。

 

 青色事業専従者に対する給与というのは、親族が事業に従事していることはもちろんですが、好きなだけ支給できる訳ではありません。同業他社や従業員の給与を勘案し支給されたものが必要経費となります。事業の貢献度合いを考えると、「支給額を上げたい」そして「節税したい」とお考えでしたら、まずはご自身の退職金だけではなく、事業専従者の方へも退職金を検討されてみてはいかがでしょうか?

 

 退職金(受取り⇒一時金の場合)は給与や賞与のような給与所得とは違い、退職所得控除額が給与所得控除額に比べ大きく勤続年数1年につき40万円(10年超は1年につき70万円)となること、さらに退職所得控除後の金額を1/2にしたものが、課税対象となります。そして国民健康保険の算定対象となる所得からも除外されております。

 両者の主な違いですが、以下の通りとなります。目的に応じてご活用頂けたらと思います。

 

 ・小規模企業共済

   掛金1,000円~70,000円

   退職事由により共済金額変わる

   掛金は事業専従者の所得控除

 ・中小企業退職金共済

   掛金5,000円~30,000円

   退職事由に関わらず退職金は一律

   原則全員加入(有期雇用契約や試用期間中に人を除く)

   掛金は事業主様の必要経費